松阪豚
ブランドストーリー

一人の男が50年を懸けて生んだ
究極のブランドポーク松阪豚

日本三大和牛の一つ、松阪牛。松阪市を中心とした地域で育った黒毛和牛で、松阪独特の風土と、大勢の生産者たちの努力が生み出した〝肉の芸術品〟だ。その松阪で、新しい食肉ブランドが熱を帯びている。「牛の次は豚」。約50年にわたる、一人の畜産家の努力がついに結実し、今、日の出を迎えようとしている。

時代が求める豚肉を生み出すため
一人の生産者による50年の冒険

 松阪豚は、「日本養豚界のレジェンド」と言われる、畜産家・山越弘一の手によって誕生した。山越弘一について少し話そう。全国養豚経営者会議(現:社団法人 日本養豚協会)を20代で立ち上げ、副会長や会長を歴任。生産の手法や管理、畜産家の環境整備など、日本の養豚業界の発展に寄与してきた。現在は、一人の生産者として松阪市で山越畜産を運営している。
 山越は早くから〝次の時代が求めている豚肉〟を考えていた。それは40~50年ほど前。「消費し尽くす時代がやって来て、そのうち終わる。そのとき、安心と安全を徹底的に担保された良質の豚肉が求められる。それは多少、高価であっても」との考えだった。食の安全が叫ばれるようになって久しい。しかし、山越はそうした世論が生まれるよりずっと前から、食の安心と安全について考えていた。全国養豚経営者会議に参加し、さまざまな環境や実態を目の当たりにしていたからこそ、そこに思い至ったのだろう。

 そうして山越は開発に着手することに。現在のブランドポークは、3種類の品種の豚を掛け合わせた三元豚が主流だ。不思議なことに、4種類の掛け合わせも試してみると劣勢の要素が出ることが多く、山越の中ではしっくりこなかったという。多種多様な品種の掛け合わせ、そして飼育と環境…。農業・畜産業界の先進国であるオランダも視察し、飼育手法を参考にした。さまざまなケースを試しては失敗を繰り返す日々。「答えはいつ見つかるのか…」。それでも諦めることもやめようとすることも一度もなかった。生産者としての矜持があった。そうしてたどり着いた答えが、ランドレース種(L)と大ヨークシャー種(W)を交配した母豚に、デュロック種(D)を掛け合わせた、LWD三元交配豚、松阪豚だった。山越自身が納得できる、安心・安全を約束した最上の豚が市場に出せるまで、気がつけば約50年が経っていた。

オリジナル飼料と220日という飼育期間
山越弘一がたどり着いた解答

 松阪豚は、山越が管理するたった一つの農場で飼育されている。飼料は、植物淡白のマイロ麦と大豆を多く使用し、免疫を高める乳酸菌と酵母を配合したオリジナル飼料を使用。合成タンパクなどの加工品は一切与えていない。抗生物質も免疫力が弱い幼少期にワクチンを投与するのみで、その後は薬剤の投与は行っていない。水は、ミネラルをたっぷり含んだ鈴鹿・大台山系の地下水だけ与えている。
 飼育期間にも特徴がある。一般的なハイブリッド種は150~170日、その他の主なLWD三元豚は190日前後で出荷される。それに比べて松阪豚は一般的なハイブリッド種より1.5倍近く長い、210~220日の飼育期間を経て出荷される。

 こうした飼料や飼育期間も、何度も山越が試行錯誤して出した解答である。ちなみに、最初の頃は元気な豚とそうでない豚を選別しながら飼育していた。今では選別する必要がなくなるほど、健康的な豚ばかり育つようになった。たくましい豚が安定的に供給できるようになったのも、山越の解答の正当性を示しているのだろう。
 これも不思議な話で、松阪牛で検証されているのだが、別の地域で同じ掛け合わせや条件で飼育してもまったく異なる牛に育ったとか。水と緑に恵まれた松阪という風土が飼育に影響しているのは間違いない。松阪豚は、松阪だからできるのである。

松阪牛と同じ脂肪融点が実現する
豚とは思えない旨味と甘味

 松阪豚の見た目は「美しい」に尽きる。弾力のある桜色の肉は、松阪牛と同じような細雪のように細かい脂肪のサシが入っている。松阪牛は「口に入れた瞬間にとろける」と言われるが、それは脂肪融点が低いため。松阪豚の脂肪融点も松阪牛と同じ37度で、手のひらにのせておくと体温で溶け出してしまう。じっくりと熟成されることで栄養価も高い。しゃぶしゃぶにすると違いはさらによく分かる。血が固まって浮き出ることはあっても、灰汁が極端に少ないのだ。これは与えてきた飼料が大きく影響している。

 味にも特色がある。甘味と旨味が強く、それでいて豚肉らしいあっさりしたところも併せ持つ。「山越畜産 松阪豚専門店 まつぶた」のオーナー、橋本妃里は松阪豚の美味しさについてこう話す。「初めて松阪豚のステーキを食べた時、『松阪牛なの?』と勘違いしたほどでした。甘味があって脂ののりもまったく違う。私は食通ではありませんが、これまで食べてきた豚肉との違いはすぐに分かりました。専門店を運営しようと決めたのも、松阪豚で覚えた感動を伝えたかったから。『こんな美味しい豚がある!一人でも多くの人に食べてもらいたい!』と」。
 松阪豚のクオリティは徐々に知れ渡っていて、今では東京の有名フレンチ店やミシュランに掲載された店舗でも松阪豚を利用されている。

松阪豚の美味しさを引き出す
調味料の開発

 橋本は松阪豚と出会い、その味に感動を覚え、生産者・山越を師事するようになった。「自分も応えたい」と思い、「松阪豚の味を最大限に引き出せる調味料を」と考えた。そうして誕生したのが、オリジナルの塩ポン酢、魔法の塩ポン酢だ。化学調味料は一切使用しておらず、利尻島の昆布でダシを取った甘味のある塩ポン酢だ。
 関東や関西で開かれた飲食関係のイベントで、多くの関係者に試食をしてもらい意見を聞きながら、理想の味を追い求めた。試食してもらった数は500人をくだらない。

 山越が歩んだプロセスと同じように、トライ&エラーを繰り返し、完成・販売にたどり着いた。魔法の塩ポン酢は、松阪豚はもちろん、揚げ物やサラダにも合うと評判だ。オリーブオイルを合わせるとイタリアンドレッシングに、ゴマ油を合わせると中華ドレッシングに変わる。水と1対1で割ると煮物や漬け物にも使える。

 橋本は「日本、そして世界に松阪豚を広めていくのが私の目標」と話す。山越が生んだ松阪豚は、橋本のような熱狂的なファンを作り、そしてさらに広がろうとしている。松阪から生まれた究極のブランドポーク。豚肉を超えた豚肉は、今、世代を超えて愛されようとしている。

オーナーインタビュー

初めて食べたときの感動を、世界に伝えていきたい。
松阪豚専門店オーナーである橋本妃里と、究極のブランドポーク「松阪豚」との運命的な出会いを語っていただきました。

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